この記事では、高圧電力・特別高圧における最終保障供給について解説します。
最終保障供給は、ラストリゾート(LR)供給と呼ばれることもありますが、このページでは最終保障供給で統一しています。
当社では、最終保障供給契約から新電力事業者へ切り替えの相談を承っています。現在、最終保障供給を受けている法人様は、お気軽にご相談ください。
最終保障供給とは
電気事業法では、一般送配電事業について次のように定めています。
その供給区域(離島(その区域内において自らが維持し、及び運用する電線路が自らが維持し、及び運用する主要な電線路(第二十条の二第一項において「主要電線路」という。)と電気的に接続されていない離島として経済産業省令で定めるものに限る。)及び同項の指定区域(ロ及び第二十一条第三項第一号において「離島等」という。)を除く。)における一般の需要(小売電気事業者又は登録特定送配電事業者(第二十七条の十九第一項に規定する登録特定送配電事業者をいう。)から小売供給を受けているものを除く。ロにおいて同じ。)に応ずる電気の供給を保障するための電気の供給(以下「最終保障供給」という。)
電気事業法 第二条八項「一般送配電事業」イ号
要約すると一般送配電事業者は、管轄エリア内において需要家から求められた際、電気の供給を保障しなければならないのです。
一般送配電事業者は、送配電や変電所の設置・保守など「電気を送り届けること」を主目的とした事業者なのですが、例外的に最終保障供給をすることが義務付けられているのです。⇒一般送配電事業者の解説
高圧電力の「最後の砦」
一般的に高圧や特別高圧を需要家に供給するのは、「小売電気事業者」と呼ばれる企業です。
その際に契約中の小売電気事業者が高圧事業から撤退するなど、何らかの理由で契約先がなくなってしまうことが起こり得ます。
最終保障供給は、そのような需要家が「電気が使えない」という最悪の事態に陥らないようにする仕組みです。
最終保障供給を行う義務がある
一般送配電事業者は、正当な理由がなければ、最終保障供給及び離島等供給を拒んではならない。
電気事業法 第十七条三項
最終保障供給は、企業が経済活動を行う上で必要不可欠な電気サービスの根幹を支える制度です。
一般送配電事業者は、最終保障供給を求められた際、特別な理由がない限り応じなければならない義務を負っています。
エネルギー危機で最終保障供給件数が急増
2021年から2022年にかけて社会情勢の影響を受けて燃料費が高騰し、それに伴い電力市場の取引価格がかつてないほどに上昇しました。
このような事情により2022年頃から、やむを得ず最終保障供給契約を結ぶ法人が急激に増えたのです。
一方で2023年に入り市場価格が落ち着きを取り戻しはじめたことを受け、事業再開する新電力事業者が増加したことで件数が減っています。
最終保障供給約款
「電気の契約先がない(見つからない)」という事態に陥った需要家は、やむを得ず最終保障供給契約を結ぶことになります。
各一般送配電事業者のホームページを見ると、最終保障供給約款が掲載され、申し込み手続きなどについても記載があります。
最終保障供給の料金は許認可制
一般送配電事業者は、最終保障供給に係る供給条件について約款を定め、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
電気事業法 第二十条
最終保障供給で適用される電気料金は、許認可制となっています。
一般送配電事業者は、事前に最終保障供給の約款を作成し経済産業省へ届け出なければなりません。最終保障供給契約を結ぶすべての需要家に対して平等に、提出した料金を適用しなければならないのです。
最終保障供給は料金が高い
最終保障供給は、「電気が使えなくなる企業を未然に防ぐ」という点でとても意義のあるサービスです。
かつて最終保障供給契約の料金は、東京電力や関西電力など大手電力会社の標準プランの1.2倍に設定されていました。
最終保障供給の方が安い逆転現象が起きた
2021年頃から新型コロナウィルス、円安、ロシア・ウクライナ問題などを原因として、世界的規模で燃料価格が大幅に上昇しました。
本来であれば、避難先として設定されているはずの最終保障供給の方が料金が安いという事態が発生したのです。
これを受け電力・ガス取引等監視委員会が2022年4月に、最終保障供給契約の料金に市場価格の変動を反映させる方針を示したことにより、各一般送配電事業者が料金を見直すことになります。
この時期、市場価格は史上類を見ない程高騰していましたので、実質的に大幅に値上げされることになってしまったのです。
2023年4月の最終保障供給の料金改定
2023年に入り市場価格は落ち着きを見せているものの、時期や時間帯によっては高くなることがあります。
2023年4月には、各一般送配電事業者が一斉に最終保障供給契約約款の見直しを行いました。これによりそれまでの料金単価よりもさらに割高になっています。
エネルギー問題が解決しない限り最終保障供給の料金は、値上げされるリスクを伴っています。最終保障供給を受けている法人様は、くれぐれもご注意ください。
最終保障供給契約から新電力へ切り替える
当社では、最終保障供給からの切り替えを承っています。現在、最終保障供給を受けている法人様は、速やかに新電力事業者へ変更することをお勧めいたします。
高圧や特別高圧事業に参入している新電力事業者の数は、エネルギー危機の前と比べると大幅に減少しています。ただ2023年から少なからず事業を再開する事業者が現れています。
新電力事業者へ変更することにより、最終保障供給契約の料金よりも間違いなく安くできます。
最終保障供給契約の違約金
最終保障供給は、「他に契約先がない場合の緊急避難先」として認識するのが一般的です。あくまでも一時的な避難先という見方を一般送配電事業者も行っているのです。
少なくとも料金面で考えた場合、他の契約先が見つかった際には、速やかに解約することができることが望ましいでしょう。
最終保障供給では性質上、最低契約期間や違約金など契約を制限する項目は設けられていません。
契約先が見つかった際は、無料で解約することができるようになっています。
最終保障供給の申し込み
最終保障供給契約は、各地域の一般送配電事業者と結ぶことになります。
ただし上述した通り、最終保障供給の料金は高くなっています。現在は新電力事業者で高圧や特別高圧を供給する企業がありますので、あえて高い電気料金で使用する必要はないでしょう。
もしも現在電気の契約先が見つからずに困っているという法人様がいらっしゃいましたら、お気軽に当社までご相談ください。
何らかの理由で最終保障供給契約をご検討される法人様は、以下のページをご覧ください。
事業撤退する小売電気事業者は、必ず託送供給契約を解除することになります。解除の申し込みが行われた後に最終保障供給契約を締結するという流れになりますのでご注意ください。
最終保障供給の契約種別
最終保障供給では、3種類の契約種別を用意しており、それぞれ異なる料金体系を採用しています。
最終保障電力A
電灯と動力を合わせて使用する施設向けのプラン。
具体的には、照明器具やパソコンなどで電力消費が多い事務所ビルや病院などが該当します。
最終保障電力B
動力をメインとして使用する施設向けのプラン。
具体的には、業務用の電気機器の割合が高い工場などが該当します。
最終保障予備電力
通常使用する設備の事故などにより電力が不足した場合の補給にあてるための電力を指します。予備電線路を通じて供給されます。