新電力の解説

このページでは、新電力について解説しています。

現在では、高圧・低圧ともに新電力会社に切り替えることが一般的になっています。新電力には、様々な種類がありますがメリットとデメリットそれぞれがあります。

新電力が始められた経緯や特徴なども記載していますので、新電力へ切り替える際の参考としてご覧ください。

新電力って何?

新電力とは、自由化された以降に電力小売事業に新規参入した事業者を指しています。

電力の小売事業が自由化されてから誕生したサービスが新電力なのです。

電力小売事業が全面自由化されたのは2016年のことですので、まだまだ歴史が浅いサービスといえるでしょう。今後さらに多種多様な新電力サービスが生まれていくと考えられます。

電力自由化により新電力が生まれた

かつて電力小売事業は、東京電力や関西電力、中部電力など各地域の大手電力事業者(一般電気事業者)10社が独占していました。

大手電力小売事業者10社
東京電力エナジーパートナー関西電力中部電力ミライズ北海道電力
東北電力北陸電力中国電力四国電力
九州電力沖縄電力

消費者としては、電気を使いたければ各地域で決められた電力会社と契約を結ぶしか選択肢がなかったのです。この状態は、独占供給と呼ばれています。

独占供給は国民生活の安全のため
独占供給は、戦後の時期に日本経済が不安定だった時代に決められた仕組みです。
人々が生活する上で大切な電気は、国が認めた会社にのみ販売を認めることで国民は安心して電気を利用することができたのです。

電力自由化の経緯

ただ日本国内が経済成長を遂げ豊かになったことで、独占供給のデメリットが指摘されるようになります。

独占供給のデメリット
独占供給では、企業同士の競争が行われないため、電気料金をできるだけ下げるような企業努力が行われにくい弱点があります。

その他にも電気契約の選択肢が一つしかないのは、様々な面で消費者にとって良くないと考えられるようになったのです。

世界的に見てもエネルギーの自由化はスタンダードとなっていたこともあり、独占供給が見直され、段階的に自由化されることになります。

電力自由化の流れ
1995年発電が自由化
2000年特別高圧(2000kw以上)が自由化
2004年特別高圧と高圧(500kw以上)が自由化
2005年高圧が自由化
2016年低圧が自由化

2016年4月に一般家庭向けの低圧電力が自由化され、日本国内の電力小売事業は全面的に自由化されました。

これにより特別高圧・高圧・低圧すべての小売事業において、新電力事業者の参入が可能になったのです。

新電力事業者数

新電力の事業者数は、2024年2月時点で724者となっています。

小売電気事業者の登録件数
2016年4月2017年4月2018年4月2019年4月2020年4月2021年4月2022年1月2023年6月
登録事業者数291394478595644716744731

2016年4月に全面自由化されて以降、新電力事業者の数は、右肩上がりで増えていました。

ただ2022年1月の744者をピークにやや数を減らしています。

これは、この時期に発生したエネルギー危機で電力会社が大打撃を受けたことが影響しています。参照:登録小売電気事業者一覧

新電力事業者は登録制
新電力事業者は登録制です。電気を販売するためには、管轄する経済産業省の審査を通過しなければなりません。
一定の信頼性がなければ新電力事業者になること自体ができないのです。
小売電気事業の登録申請

新電力のシェア

新電力のシェア推移
新電力が占める割合・資源エネルギー庁

図は、2023年において新電力が占めている割合の推移表です。

新電力に変えている割合
新電力のシェアは、一般家庭向けの低圧電力がもっとも高く23.8%。これでも4件に1件が新電力に変えている程度で、決して高いとはいえないでしょう。

高圧に関しては、18.7%で5件に1件の割合です。
特別高圧は、6.8%で1割に至っていません。これは特別高圧に参入している事業者が少ないことも影響していると考えられます。

図を見ると、高圧と特別高圧の新電力シェアが2021年をピークに下がっていることがわかります。特に高圧は、30%に至る割合だったのが激減しています。

このシェア低下は、この時期に発生した燃料費高騰により高圧電力事業に参入していた会社の多くが撤退してしまったことが影響しています。参照:最終保障供給の解説

新電力に変えるのが心配?

新電力に変えていないということは、東京電力エナジーパートナーなど地域の大手電力会社と契約しているということです。

上記した通り、家庭向けの電気は2016年に自由化されて数年が経過しています。高圧や特別高圧においては、10年以上経っています。

それにも関わらず新電力のシェアがなかなか増えていないのは、「大手電力会社が安心」と考えている方が未だ多いと推測されます。

新電力のシェアは増える?
低圧のシェアは右肩が上がりで伸びていますので、年月が経てばさらに上がっていくでしょう。
一方で高圧や特別高圧に関しては、エネルギー危機の際に撤退した事業者が多いため、参入する会社が増えることがシェア拡大において必須でしょう。

地域毎の新電力シェア

地域・電圧別の新電力シェア
地域・電圧別の新電力シェア・資源エネルギー庁

こちらは、各電圧における地域ごとの新電力シェアです。

図を見ると、低圧・高圧・特別高圧すべてにおいて東京電力管内では、新電力の割合が高いことがわかります。

これは関東地方では、営業活動などの勧誘が盛んであるほか、消費者意識としても「新電力に変えて電気代を安く抑えられないか」と考える方が多いと推測されます。

尚、北陸電力は、自社の水力発電の割合が高いことなどが要因で電気料金が安いことを特徴としています。そのため特に低圧においては、北陸電力管内で新電力のシェアが極端に低くなっています。

新電力事業者の紹介

電気は個人の社会生活や法人が経済活動を行う上で絶対に必要で、市場として捉えるととても大きなお金が動いています。⇒資源エネルギー庁・電力事業の市場規模

自由化以降、様々な企業が新電力事業者として登録しています。

特別高圧や高圧、一般家庭向けの低圧を含め、一部の新電力会社を紹介します。記載している以外にも様々な新電力会社があります。

ガス会社が新電力に参入

新電力事業者の中では、ガス会社が多くの割合を占めています。

電気とガスのセット販売
都市ガス・LPガス双方ともに自社のガスと電気を一緒に販売している事業者が多数あります。セット割引きやエネルギー代を一元化できるメリットもあるため、ガス会社が新電力に参入するのはとても自然な流れです。

もっともスタンダードな新電力だといえるでしょう。

「ガス会社が新電力に参入する」のとは逆に、「電力会社が新都市ガスに参入する」ことも一般的です。電力が2016年に全面自由化された後、2017年4月に都市ガス小売事業も自由化されています。⇒都市ガス比較サイト

エネルギー会社の新電力

ガスと同じくエネルギー関連を扱う企業の新電力も多くあります。

携帯電話・通信関連会社

携帯電話などの通信と電気の契約をセットにするなど、通信関連会社が電力を販売することも一般的になっています。

商社系新電力

電力市場は非常に大きいので、商社も新電力事業に参入しています。

独立系新電力

他業種の大資本が入っていない新電力の販売を目的として設立された会社もあります。

発送電分離

発送電分離
発送電分離の例

電力自由化に伴い勧められたのが「発送電分離」です。

日本国内の電力小売事業は、独占供給であったことは上述した通りですが、独占状態であったのは、小売だけでなく「発電」や「送電」も同様です。

例えば関東地方であれば、東京電力が発電から送電・小売までを一貫して担っていたのです。

発電事業の自由化
まず1995年に発電事業が先駆けて自由化されます。発電事業を営むことが大手電力会社以外にも認められたのです。

一方で発電所から各供給地点にまで届けられる送配電事業に関しては、自由化されず大手電力会社10社のみに許されています。⇒一般送配電事業者の解説

送配電事業は自由化されていない
つまり発電と小売は自由化されたものの、送配電に関しては自由化されていません。
これは各々の会社がそれぞれ電線を立てることは非効率であり物理的にも現実的ではないことからこのような仕組みになっています。

発電事業者や小売事業者は、一般送配電事業者が所有している電線(送配電施設)を借りて使わせてもらっているのです。

発送電分離
送配電事業のみ自由化されていないため、それまで一元化されていた発電事業と送電事業を管理する会社を分離することが義務付けられたのです。これを発送電分離といいます。

これは新電力事業者が送配電を使用する際に不利益を受けないように配慮されたものです。

例えば東京電力が発電と送配電・小売すべてを行っていたとして、「自社の小売事業に有利になるようなシステムにしよう」など特定の企業を優遇することをできないようにしているのです。

電気の質は同じ

大手電力会社と新電力会社の電気の質は同じです。

新電力に変えたからといって、電化製品などに影響を及ぼすことや設定が必要になることはありません。

同じ送配電設備を使用する
電気は、張り巡らされた送配電線を通じて各供給地点へ届けられます。これら電線は、一般送配電事業者の持ち物であり、小売会社は電線を借りて使用させてもらっています。
「新電力の分だけ別の電気を送る」ことは、物理的に不可能です。新電力に変えたとしても電気は全く同じものです。

新電力のメリット

消費者にとって新電力事業者を選ぶメリットは、状況により様々です。

そもそも電力小売事業が自由化されたのは、サービスを多様化し、消費者の選択肢を増やすことを目的としています。

新電力に変えるメリットがある
つまり新電力の各社は、必ずなにかしら切り替えるメリットを設けているのです。料金を含めて大手電力会社とまったく同じということはありません。

1kWhあたりの単価を下げる、基本料金を下げるなど料金を安くして差別化を図る事業者が一番多いでしょう。それ以外にもガスや携帯電話など自社のサービスとセットで販売する新電力も多数あります。

その他、ポイントやクーポンを付与するなど、新電力に変えるメリットは様々です。

消費者が各々のライフスタイルに合わせて、お得になるサービスを選べることこそが新電力の良さなのです。

新電力のデメリット

一般的には新電力に変えるデメリットは、非常に少ないと考えられます。

なぜなら電力自由化は国が決めた事項で、大きなリスクが伴うことを国民に勧めることはないからです。

ただリスクが全くないのではありません。新電力に変える際のよくいただく疑問を記載しました。

新電力会社が倒産したら

小売電気事業者の事業停止数(数字は累計)
2016年4月2017年4月2018年4月2019年4月2020年4月2021年4月2022年1月2023年6月
事業承継件数0618326794105135
事業休止件数0222351443
事業廃止・解散・取消件数2791220384896

新電力に変えることをためらうのは、「電気が使えなくなってしまうのが怖い」と考えている方が多いのではないでしょうか。

新電力は、撤退や企業の倒産などで電気を売ることを止めてしまうことがあります。また強引な営業や虚偽の勧誘など不適切な行為で行政処分を受ける事業者もゼロではありません。

新電力事業者の倒産
一例を挙げると、2021年に燃料費高騰の影響を受けた新電力大手のF-Powerが東京地裁へ会社更生法の適用を申請し倒産しました。これは、新電力事業者として過去最大の倒産です。
参照:F-Powerの倒産

新電力は、大手電力会社10社と比べると脆弱であることは否定できないでしょう。

電気が使えなくなることはあるのか?

新電力事業者が倒産などになったら電気が使えなくなるのでしょうか?

新電力会社が倒産したり電気事業から撤退してしまうことは、実際に起こり得ることで行政としては対策を施しています。

突然電気が使えなくなることはない
新電力会社が電力小売事業を停止する場合、契約中の顧客に対して事前に通知しなければならない義務があります。
「明日から電気が使えません」という状況になることはありません。

契約している電力会社から事業撤退などの通知が届いた際には、速やかに他の新電力か地域の大手電力会社に申し込む手続きをしましょう。

※上記の表で「事業承継」はグループ会社などに電力小売事業を引き継ぐことですので、消費者には案内が送られます。事業休止や廃止などと異なり、特別な対応は必要ないことがほとんどです。

新電力は停電しやすい?
新電力に変えると停電しやすくなるのでは?と疑問を感じる方が多いようです。
しかし前項で記したように、大手電力でも新電力でも物理的な部分は変わりません。停電が起こりやすいなどというデメリットはないのです。

新電力に変えて電気代は本当に安くなるのか?

新電力に申し込む前には、必ず料金プランを確認して電気料金が安くなるのか、自身にとって得になるかどうかを確認しましょう。

問題を起こした新電力会社
新電力事業者は数百社あり、審査を受けているとはいえ、営業手法などに問題がある事業者がないとはいえません。
特商法に抵触する行為などで問題を起こした事業者は、管轄する経済産業省や総務省から行政処分が下される例も少なからず存在します。

参照:総務省・あくびコミュニケーションズ(あくびでんき)に対する業務改善命令
勧誘された場合には要確認
特に自分で探したのではなく、電力会社側から電話や訪問などで勧誘を受けた場合には注意が必要です。
勧誘(訪問販売など)を行うことが必ずしも悪い訳ではありませんが、特商法に基づき正確なサービス案内をしていない可能性があります。

行政から処分を受けた事業者のほとんどは、営業活動において問題を起こしてしまったものです。

様々な料金プランがある
新電力の料金プランの中には、市場連動型の単価や一定の使用量までは定額制など、状況によっては大手電力会社よりも高くなるかもしれないサービスもあります。
また実際には電気料金は安くならず、電気代以外の特典を付与しているサービスもあります。

申し込む前に信頼できる人に相談してみるのも良いでしょう。

新電力の制約期間に注意

新電力の中には、制約期間を設けているサービスもあります。

最低利用期間があり途中解約すると違約金がかかってしまうのです。新電力を選ぶ際には、制約期間があるかどうかを確認しましょう。

一般家庭向けの低圧電力では、制約期間は設けられないことが通常です。

新電力は危ないのか?

総合的に見て、新電力に変えるのは控えた方が良いでしょうか?

結論としては、自身にとってお得になるサービスが見つけられたのであれば、積極的に新電力に変えることをお勧めいたします。

得になるなら新電力に変えよう
例えば「ご自宅の電気の使い方であれば確実に料金が安くなる」、「セット割引きで自身が契約している電気以外のサービスで特典を受けることができる」など、各々の環境と照らし合わせて得になるようでしたら切り替えた方が良いでしょう。

国としても、「国民の電気契約に選択肢を増やして、多彩なサービス展開を期待する」という意味で電力小売事業を自由化しています。

上述したように、考え得るリスクも適切な対処をすれば、大きな問題になる可能性は非常に低いでしょう。

「同じ商品をよりお得に使用する」という内容ですので、サービス内容を吟味した上で新電力に変えることをお勧めいたします。